相続人が行方不明のときの遺産分割の解決法とは?

父が交通事故で他界してしまいました。母、きょだいで遺産を分割することになりました。

ところが、10数年前に家出したまま、行方がわからない兄がいます。

相続人全員がそろわないと、遺産分割協議ができないといわれました。どうしたらよいでしょうか?

 

➀探偵・興信所などに相続人探しの依頼をする方法もあります。

所在がわからない相続人を探し出すことで、遺産分割協議を円滑に進めることができます。

探偵には、独自の情報ルートがあり、それら情報から相続人の所在が判明することもあります。

 

➁このほか、行方不明になってから7年以上が経過していれば、家庭裁判所に失踪宣告の申立をします。(民法30条)

失踪宣告が認められれば、その人は死亡としたものとみなされ、相続人でなくなることになります。

もし、その相続人に子がいる場合には、その子が代襲相続人することになり、遺産分割協議に加わることになります。

※しかし、失踪宣告をうけていた人が生存していた場合には、失踪宣告が取り消され、相続権も復活します。

 

③また、失踪宣告の申立てをせず、家庭裁判所に財産管理人を選任して分割協議をする方法もあります。(民法103条)

ただし、財産管理人の権限は、不在者のために財産を保存、利用、改良する行為しか認められていません。

ですから、遺産分割協議に参加し、同意するためには、家庭裁判所の許可が必要となります。

 

遺産分割協議とは

財産相続で、具体的に「誰が」「何を」相続するか決めることが遺産分割協議です。(民法907条1項)

被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも協議を行うことができます。

被相続人が遺言を残して亡くなった場合は、遺言の内容で

「〇〇の土地は××に」

などと、個別具体的に相続する方法が定められていれば、これに従った遺産分割が行われますので、分割協議で決める必要はありません。

 

協議の開始時期

民法では、何も規定がなく、誰がよびかけても、いつ開始してもよいです。

しかし、相続開始後、相当な期間が経過してからでは、

・遺産が分散するおそれ

・生活に困った相続人が遺産の一部を費消する

おそれも十分に考えられます。

また、相続があったことを知ったときから3か月を超えると、負債が多い場合などの相続放棄などもできなくなります。

ですから、相続開始後、あまり遅くない時期から始めるとよいと思われます。

 

協議を進めるルール

遺産分割協議というものは、被相続人の残した遺産を、各相続人がどのようにして相続をするかの話し合いです。

そのため、協議を進めるにあたり、

・相続人のうちの1人を除外して行う

・相続人以外の者を加えて行う

などの遺産分割協議は、制度の趣旨に反して無効となります。

相続人が海外にいったまま行方不明、あるいは、話がまとまらない場合には、家庭裁判所へ調停または審判を求めて決めてもらうことになります。

 

上手な分割方法

各相続人が相続権を主張すると、権利の衝突が起こってしまいます。

いつまでたっても自分の権利ばかりを主張していたのでは、話しが進みません。

うまくまとめるためには、お互いが譲歩し合って、話しをまとめることです。

(遺産分割の方法)

➀主な相続財産が不動産しかない場合など

・遺産を売却してその代金を分割する方法(換価分割)

➁家業を1人に継がせる場合など

・資産の全部あるいは大部分を特定の相続人に相続させ、超過部分を他の相続人に金銭で支払う方法(代償分割)

③遺言による指定がない場合

・相続人全員が協議して分割(協議分割)

・個々の財産を各相続人が相続する(現物分割)

④被相続人が遺言により指定

・遺言により分割方法が指定されている場合(指定分割)

⑤遺産分割協議ができない、またはまとならい場合

・家庭裁判所に調停を申立て話し合いで決める(調停分割)

・家庭裁判所の審判によって決めてもらう(審判分割)

 

まとめ


相続は、誰にとっても、いつかは必ず直面する問題です。

特に、財産が大きくなると、手際よく進めるのは、なかなか難しいかと思われます。

相続人が行方不明のケースでは、家庭裁判所に申立てをする方法もありますが、探偵に人探しを依頼することも、トラブルの解決法の1つといえるでしょう。

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