家出した子どもの調査を依頼しても大丈夫?

親子にも独立したプライバシー権がある

 

親子であっても、法律上、それぞれ別々の人間です。ですから、子は親に対してプライバシー権があります。逆に、親も子に対するプライバシー権があります。

そのため、親が勝手に息子の手帳をみたり、それを探偵に渡して調査してもらうことは、プライバシー権の侵害に当たる可能性もあります。

親子であっても、その関係が非常に悪い状況にあるときは、場合によっては、プライバシー権を侵害されたとして、損害賠償を請求される可能性もあります。

 

【豆知識】プライバシー権とは!?

 

憲法では、いくつかの条項でプライバシーにかかわる権利を保障しています。たとえば、21条2項「通信の秘密」を規定しています。

他人の手紙を勝手に開けたり、電話を盗聴することは、プライバシー侵害となります。また、35条1項は無断の住居侵入を禁止しています。

さらには、38条の不利益な供述の強要を禁止しています。

そのほか、19条の思想良心の自由もまた私的領域に介入されないというプライバシーにかかわる権利を規定しています。

 

プライバシー権を認めた裁判例について

 

13条「すべての国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求権に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」

と規定されています。

これは「幸福追求権」と呼ばれます。人が人として生存し生活するために欠くことのできない権利を包括保障した規定です。

判例では、13条を根拠にプライバシー権を認めています。

(東京地裁昭和39年9月28日判決)

 

違法とはいえない場合

 

プライバシー権の侵害に当たるとしても、違法とはいえない場合もあります。例えば、子どもが未成年で同居し、全面的に親に依存し生活している場合です。

この場合、むしろ親は、子どもを保護すべき立場にいます。ある程度、子どものプライバシーに立ち入って行動を把握し、子どもに対する保護責任を果たすべきことになるでしょう。

子どもが年少の場合では、更にプライバシーに立ち入ることも許されることになると思います。また、同居している家族の場合では、やはり他人とは異なります。

 

プライバシー権がある程度侵害されることは、当然の前提になっているといえる場合もあるでしょう。さらに、子どもが突然いなくなった場合、トラブルに巻き込まれているかもしれません。子どもとしては、居場所を探してほしいと思っているかもしれません。

親がそのように考えて、手帳をみるなど、やむを得ないとされることも多いでしょう。

 

まとめ

 

子どもが突然家出して、その後も長期間にわたって全く行方がわからないような場合は、明確な本人の承諾がなくても、手帳を探偵に渡したり、立ち寄る可能性のある場所のリストを探偵に渡したりして、行方調査を依頼したとしても、違法とはいえないでしょう。

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