配偶者の浮気調査のために盗聴・盗撮を依頼しても大丈夫なのか?
配偶者が浮気をしていたということになれば、民法上、不貞行為に該当します。
離婚や慰謝料を請求する根拠となり得ます。
依頼者としても、確実な証拠を手に入れたいと思うのも理解はできます。
では、確実な証拠を得る目的で、探偵業者に電話を盗聴したり、部屋に隠しカメラを設置してみようと考えた場合、これを探偵に依頼しても問題ないのでしょうか?
結論からいいますと、不貞行為の証拠を得るためであるからといって、盗聴や盗撮が許されることにはならないでしょう。
盗聴について
憲法では、「通信の秘密」が保障されています。(憲法21条2項)
これは、
・電話や手紙等の通信手段を用いた表現の自由を保障
・個人のプライバシーを厚く保障
しているものです。
なので、電話の盗聴行為は、それ自体が憲法に違反することになります。
もっぱら、警察などの捜査機関が捜査のために、電話の盗聴を行うような場合であっても、極めて限定された場合のみ、例外的に許される扱いとなっています。
そのため、一般の私人に過ぎない、特別の権限が与えられるわけでもない探偵が電話の盗聴するようなことは許されません。
盗聴行為は、電気通信事業法にも抵触し、処罰の対象となります。
また、電話回線以外に盗聴器をしかけ、その録音内容を他に漏らした場合は、電波法によって処罰されます。
さらに、他人の家に入り込んで、
・盗聴器をしかけるなどすれば住居侵入罪
・盗聴器をとりつける際に物を壊した場合は器物損壊罪
・建物を壊した場合は建造物損壊罪
により罰せられます。
そして、このような行為は、民法上、不法行為に該当することになるでしょう。
よって、刑事上だけでなく、民事上も損害賠償責任を負う可能性があります。
盗撮について
盗撮については、基本的にプライバシーの侵害に当たります。
許されないというほかならないでしょう。
判例でも、探偵が、浮気相手のマンションの配電盤の上に、無断で遠隔操作のビデオカメラを設置して、3日間にわたり居室の出入口を撮影した事例で、プライバシーの侵害を認め、探偵に損害賠償を命じた例があります。(京都地裁平成18年1月24日判決)
依頼者の責任について
探偵がもしこのような違法な調査を行った場合、調査を依頼した者も、違法であることを承知し、探偵に積極的に違法な調査をするように求めるなど、そのかかわり具合によっては、責任を負う場合もあります。
そのため、契約を結んだ際は、調査の方法についても、しっかり確認しておく必要があります。