不貞の慰謝料に請求期限はありますか?
夫の不倫が5年前に発覚しました。一度は、夫を許しましたが、それから夫婦仲が険悪となり、離婚することになりました。
結果的には夫の不倫が原因で離婚することになったので、夫に慰謝料を請求したいのですが、慰謝料の請求権は3年で時効が消滅すると聞いたことがあります。
5年前のことについて慰謝料を請求することはできますか?また、夫の不倫相手にも請求したいのですが、可能でしょうか?
A 夫に対する慰謝料の請求は、離婚から3年間は認められる場合があります!
夫に対する慰謝料請求
夫婦には、貞操義務があることから、不倫は貞操義務に反する不法行為であり、慰謝料を請求する理由になります。
たとえ離婚を思いとどまったとしても慰謝料を請求する権利がなくなるのではありませんので、離婚しなかった場合でも慰謝料は請求できます。
ここで、不法行為に基づき慰謝料請求権は、損害および加害者を知ったときから3年で時効により消滅するため、上記事例では、夫との不倫を知った時期から5年が経過していることから、慰謝料請求権の時効消滅が問題となります。
相手が不倫をしたことによる精神的苦痛は不倫を知ったときにまず生じますので、不倫自体を理由とする慰謝料請求権は3年で時効消滅します。
例えば、離婚をせずに慰謝料だけを請求する場合には、不倫を知った日から3年で慰謝料請求権は消滅します。
しかし、不倫が主な原因となって離婚に至った場合には、離婚の成立によってはじめて離婚自体による精神的苦痛が生じると考えられ、その時点で損害をしることになったといえます。
そのため、相手の不倫が原因となって離婚に至った場合には、離婚が成立した時点から消滅時効の期間が始まるとされています。
以上の考え方により、不倫が原因で離婚が成立したときには、不倫を知った日から3年以上が経過していても、離婚の成立から3年以内であれば慰謝料を請求することができます。
不倫相手に対する慰謝料請求
不倫相手に対する慰謝料請求については、不倫相手に故意または過失があること、すなわち夫が既婚者であることを知りながら男女関係になったことが必要です。
また、不倫相手に対する慰謝料請求権の消滅時効は、不倫相手の素性を知ったときから進行するので、不倫相手が誰であるかを知ったときから3年以内に慰謝料請求する必要があります。
コラム
令和元年4月1日に施行された改正民法によって、慰謝料の請求期限が一部従前の取り扱いから変更されました。慰謝料は、相手の不倫やDVなどの不法行為によって生じます。
不法行為に基づく損害賠償請求権の時効は、原則として損害および加害者を知ったときから3年間ですが、改正民法では、人の生命または身体を害する不法に基づく損害賠償請求権に限り、その時効が5年に変更されました。
つまり、不倫による慰謝料の請求期限は従来通り不倫を知ってから3年間ですが、DVによって骨折などのケガを負った場合の慰謝料はケガを負ってから(事案によっては治療が終了してから)5年間請求できることになりました。